田原天皇(施基皇子)伝承-4

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ここは古くから、自然の豊かな美しい地でした。
当時の皇族は都に国家から与えられた官邸をもち、その他に、本邸ともいうべき屋敷を主に大和の好みの地に構えていました。
それゆえに、施基皇子の春日山の邸宅も、決して宮廷の空気を嫌っての隠棲の地として解釈すべきではなく、もう一家を持つ年齢にあった皇子の真の憩いの場としての邸宅であったと思われます。
多紀皇女との間には、施基皇子の第1子春日王が生まれました。
その系譜は、春日王~安貴王~市原王と続きます。
それぞれの歌が『万葉集』に載せられていて、施基皇子の系統が「万葉一家」と称せられる所以になっています。清澄で自然鑑賞に優れた歌人として『万葉集』に六首の和歌作品を残しておられます。いずれも繊細な美しさに満ち溢れる秀歌です。

神名火の磐瀬の杜の霍公鳥毛無の岳に何時か来鳴かむ
(現代語訳)神のいます石瀬の森のほととぎすよ、毛無の岡にいつ来て鳴いてくれるのだろうか

石ばしる垂水の上のさ蕨の萌え出づる春になりにけるかも
(現代語訳)岩の上を激しく流れる滝のほとりでは、さわらびが芽を出す春になったことだなあ。

大原のこの厳柴の何時しかとわが思ふ妹に今夜逢へるかも
(現代語訳)大原のこの神聖なるいつ柴のようにいつ逢えるだろうかと思っていた君に今夜逢えたよ

むささびは 木末求むと あしひきの 山の猟夫に あひにけるかも
(現代語訳)むささびは木の枝へ飛び移ろうとして、山の猟師につかまってしまったよ。

采女の 袖ふきかへす 明日香風 都を遠み いたづらに吹く
(現代語訳)采女の袖を明日香の風が吹きかえしているよ。いまはもう京も遠くなり、むなしく吹くことだなあ。

葦辺ゆく 鴨の羽交(はがひ)に 霜降りて 寒き夕へは 大和し思ほゆ
(現代語訳)葦のほとりを漂って行く鴨の羽がいに霜が降って、身にしむほど寒い夕暮は、故郷の大和がしきりと思われる。



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